PDT治療による副作用

あまり馴染みのないPDT治療

PDT治療という言葉を聞いたことがありますか?
数年前に、初期の子宮頸がんに使用した例を見たことがあります。
当時は、まだわずかな臨床例しかなくて、何もかもが手さぐり状態でした。

PDT(光線力学的療法)は、ざっくり言うと、レーザー治療のような物ですが、強力なレーザーとは違い、がん細胞がレーザーに反応しやすい状態にしてから、弱いレーザーを患部に照射しよう、という仕組みです。
その際に、フォトフリンナトリウムという薬剤をあらかじめ患者さんに投与しておくのですが、それが大変でした。

副作用がつらい

まず、どの程度の薬剤を投与すればよいか、まだ実験段階なので、どうしても大目に使用することになります。
投薬量というのは、効果が出る最少から割り出すのではなく、ここまでなら副作用に耐えられる、という最大から割り出しているためです。

今回の治療でも、現在の規定より多く投与することになりました。
光感受性の物質を投与するわけですから、患者さんは極度の光線過敏症に苦しむことになります。
どのくらいかと言うと、一瞬メールチェックをしようと、携帯をパカッと開いたとします。
すると、その光で顔に大やけどを負ってしまうのです。

ちょっと飲み物を、と思って冷蔵庫を開けると、その光で顔や手に大やけどを負ってしまうのです。
すでに、日焼けでは済まないレベルです。
油をかけられたように、皮膚がめくれあがり、パンパンに膨れて痛むのだから、たまりません。

治療を受けてからの流れ

そのため、PDT治療は個室に入ってもらい、完璧な暗室状態にしての入院となります。
メインイベントである、レーザー照射(手術にあたるもの)の時も、全身を黒い布で隠し、周囲の人が何事かと驚く中を、完全な暗闇状態を確保しながら処置室へ向かうことになります。

その異様な光景ったら! 事情のわからない一般の患者さんは当然として、直接かかわりのない看護師や医師も、何事かと目を丸くする始末。
婦長さんが、隙間なく黒幕で覆った患者さんに、応援の声かけに来ますが、患者さんにしてみれば、薬を投与する前に来てよね! って感じでしょう。

無事処置が終了すると、恐怖の暗室生活開始です。
食事や掃除の人が部屋に入るときは、声をかけてもらい、部屋の奥で布団をかぶって暗闇を確保したのちに、ドアを開けてもらいます。
最初の5ルクスといえば、部屋の豆電球をつけるより暗いレベルですから、ほとんど手さぐりで移動し、形も手で判別するくらいです。

それでも、患者さんは日焼け止め・サングラス・全身黒装束なのです。
スタッフも気味悪がって、あまりその部屋には行きたがりません。
患者さんは何もできないので、ベッドの上でストレッチ体操をするくらいしかありません。
何日か入院するうち、薬剤の効き目が薄れるだろうという推測のもと、徐々に明るさを増していきます。

何ルクス、というとイメージわきませんが、15ルクスで、ごく近くの人の顔が判別できるくらい。
60ルクスで、バーやホテルのロビーくらいです。
本当に、治療そのものよりも、薬剤の副作用が大変な先端医療の例でした。